
昨日妻と、映画「かもめ食堂」を観ました。
ほとんど宣伝もせず、小さな映画館でしか上映されて
いないのですが、口コミで拡がっていっているのでしょう。
静かな人気で、全国での上映期間も伸びているようです。
この日も映画館はほぼ満席でした。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ。
素晴らしい演技センスと不思議な存在感をもつ、三人の
織りなす「かもめ食堂」の物語。
観終わった後は、生きるのが何だか楽しくなるような映画
でした。
舞台は何故かフィンランド。
日本とは違い、ゆっくりと時が流れていきます。
主人公のサチエ(小林聡美)は、ここで、「かもめ食堂」という
小さな食堂をオープンします。
彼女のほんの少しのこだわり。
それは、レストランではなく食堂。
ふらりと気軽に入ってこれて、そして思い思いに楽しい時間を過ご
してくれる・・・。
そしてメインメニューはおにぎり。
でも、興味本位で外から店の中を覗く人はいますが、誰も来ない
日が幾日も続きます。
それでも、彼女は奇をてらったり、策を労したりせず、そのほんの
少しのこだわりを捨てずに、真面目にやっていればいつか客は来てく
れると信じ、毎日店を開き、食器をピカピカに磨きます。
そんな中で、訳ありの二人の日本人、片桐はいりともたいまさこが、
それぞれこの食堂にやって来て、そしていつの間にかこの食堂を
手伝うようになります。
そこでゆっくりと穏やかに展開していく、いくつかの小さな奇跡。
それは笑いと優しさに包まれた、神のご襃美のような奇跡。
いつしか、美味しいコーヒー、心のこもった料理、そして優しいけれど
凛としたたたずまいの「かもめ食堂」のほんの少しのこだわりに、
客は少しずつ増えていきます。
(結末は、まだご覧になっていない方のために、ここでは控えさせて
いただきます(^_^))
「やりたいことをやっているのではなくて、やりたくないことは
やらないだけ」
「人はみんな変わっていくものですから」
サチエの言葉から伝わる潔さと力強さ。そして信頼。
ここにあるのは、優しさと自由。
日々の喧騒の中では見逃してしまうような幸せと小さな奇跡・・・。
普通だけど、何だか可笑しくて愛しい人々が織りなすこの物語は、
私をとても幸せにしてくれました。
この物語が教えてくれているように、私たちの人生の毎瞬毎瞬が、
小さな奇跡の積み重ねなのに違いありません。
策を労せずとも、作為や意図をもってコントロールしようとしな
くとも。
そこに純粋な、ほんの少しのこだわりさえあれば、神からの
ご襃美を受け取ることが出来るのかも知れません。
そして、きっと私たち一人一人が、その小さな奇跡の主人公なのです。